「ねえ、バクラは俺のどこが好きなの?」

言った。

「え?俺様、御伽が好きだって、一回も言ったことねぇぜ?」

言った。


そして、時間が流れた。


「……………死んでしまいたい。」
両手で頭を抱えた御伽が、そう言った。
その横で、バクラが意地悪そうに、にやにやと笑っている。
俯いているから顔は見えないけれど、その長い漆黒の髪が、はらりとかかった首筋が、はっきりと赤くなっているのが見てとれた。
放っておいてやればいいのに、バクラは、その右腕で御伽の肩を抱く。
そして、引き寄せた。
自分に抱きかかるような体勢になった御伽を、ちらりと上から見下ろすと、バクラは満足そうに息をついた。
よほど恥ずかしいのか、いつものように邪険にすることもなく、御伽はバクラの成すがままになっている。
ただ、バクラの顔を見たくないだけかもしれない。バクラに自分の顔を見せたくないだけかもしれない。
なんにせよ、バクラにとっては、これ以上ない好都合だった。
頭に顔を埋めれば、御伽の髪からは、石鹸の清潔な香りがした。
よく手入れされているのか、頬に感じる柔らかさに、バクラは訳も無く満たされた気持ちになった。

「……だって、いつも…い、色々してくるじゃないか。」

どうやら、それが当たり前になりすぎていて、言われたつもりになっていた、らしい。
バクラは、頭を掻いた。
自分の怠け癖が、思いの他、素晴らしい結果をもたらしてくれていたようだ。
正しく言うならば、別に言葉を怠けていたのではなく、忘れていたのであるが。
そもそも、バクラは得にならないことはやらない性分である。
バクラの言葉に、望むような御伽の言葉が返ってくるなら話は別だが、億に一つもそんなことは考えられなかったので、御伽のいう色々なスキンシップをさせていただいていた、というわけだ。

ただ、それだけのこと。

「俺様、お前のこと、スゲエ好き。」

耳の先まで赤くした御伽を見て、バクラは、スキンシップの一万倍くらい、その言葉が好きになった。




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そして、普段の一億倍くらい、優しい管理人だから、バクラは幸せなんだよ。(暗に次回以降の不幸バクラを示唆