「ハドラー、好きです。大好きです。愛しています。」
戯れのようにアバンが言う。

「……酔っているのか?」
真面目な顔でハドラーが尋ねる。

「酔っているように見えます?」

見えない。
外見的に普段と変わった様子は全くない。
顔が赤いわけでもないし酒臭いわけでもない。
ただ、躊躇いもなく愛の言葉を何度も何度も口にするものだから。

「珍しい、と思っただけだ。」
「変ですか?」
「変だ。」

少し考えこんでからアバンが言う。

「嫌いですか?」

たっぷり考え込んで、いくらか仏頂面でハドラーが言う。

「……………嫌いではない。」

くすくすと小さくアバンは微笑む。

「“まさか自分が愛などという言葉に喜ぶとは”なんて、考えているんでしょう。」
「……そんなに分かりやすいか?」
「いいえ?他の方にとっては違うと思います。ハドラーってば無表情ですから、美味しいのかどうか顔を見ただけじゃ分からないって、コックが不安そうに言ってましたよ。」
「じゃあ、お前が人の心を読むことに長けているということか?」

それはそれで厄介な。
ハドラーはため息まじりにぼやく。

「いいえ、それも違いますよ。」

アバンが笑う。

「ハドラーがそうしてくださってるんですよ。」
「?、どういうことだ?」


「私にだけ、分かるように、ハドラーがそうしてくださってるんです。」


それこそ更に厄介だ。
ハドラーは心の中で呟いた。

「無意識にか?」
「無意識にです。」
「改善する術は?」
「ありません。」
「言い切るな。」
「だって、私もそうなんですから。」

……。

「お前もか。」
「はい、私もです。」

笑顔に、どれだけ救われているか分からない。
声に、どれだけ支えられているか分からない。

そして、
全身で、
自分を、
愛していると、
囁いてくれることに、
どれだけ、


どれだけ、


「……もう一度言ってくれないか?」
「何をですか?」
「お前がさっき言った言葉をだ。」
「………変なんでしょう?」
「変だ。だが」
「だが?」
「嫌いじゃない。」


そして、それはそれは幸せそうにアバンが笑うものだから、
俺の負けだ、と思わずハドラーは呟いてしまった。




好きです。大好きです。愛しています。





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大御所です。(どどーん
ハドアバは穏やかに甘い。