| 城之内克也は思った。 時計がねぇ…!!!! そう、この部屋には時計がなかった。 それは、城之内にとって、全くもって切実な問題であった。 自宅の玄関扉が見知らぬ部屋に繋がっていたことよりも、この部屋にこうして時計が一つもないことの方が、今の城之内の心拍数を10上昇させる為には、目覚しい効果を発揮していた。 城之内は貧乏学生である。 学費も生活費も父親がせっせせっせとこしらえて来る借金返済もすべて自分のバイト代で賄っている城之内にとっては、バイトこそ人生だ。 たとえ自宅の扉がタヌキ型ロボットのなんたらドアであろうがなかろうが、バイトに遅刻せず出勤することが、城之内のすべてだった。 勿論、携帯電話も腕時計も持っていない城之内は、今は腹時計以外に時間を知る術はない。 健康優良児の城之内にとって、腹時計は、電子時計にも負けない性能を誇っている。 しかし、その頼みの綱である腹時計さえも、ハードな工事現場のバイトに備えて、本日は珍しく、しっっかりと昼食を摂ってしまったので、腹の減り具合で時間を計ることができない。 磁気の乱れている場所では、高性能の電子時計さえも、狂いを来たすように、城之内の腹時計とて、普段とは違った環境ともなれば、その精度が鈍ったとしても当然だ。 城之内の腹時計は、「空腹」「とても空腹」「やばいくらいに空腹」の状態にしか対応していないのである。 やはり慣れないことはすべきではない。 だから、城之内は叫んだのだ。 「今すぐ俺をここから出せぇえー!!」 |