| 黒羽快斗は思った。 神様、ありがとう!! 『同窓会に着ていく服を選びたいのよ。』 大切な息子の日曜を奪った母親は、そういって、黒羽をデパートへと連れ出した。 黒羽は、一週間も前(つまり先週の日曜)から、新一の家に遊びにいくと決めていたというのにだ。 思春期の男の子には、避けることのできない大切な用事というものが、たくさんあることを、 いい加減、母さんは理解しなければならない。 黒羽は、腕を組んで、うんうんと頷く。 ちなみに、本日決定した来週の日曜の予定は「新一の家に遊びにいく」だ。 来週の日曜に決定する予定でいる、再来週の日曜の予定も「新一の家に遊びにいく」だ。 このようにして、黒羽の日曜の予定は、未来永劫まで既に決定している。 これを同じく思春期である工藤新一が耳にしたならば、警視庁という国家権力と絶大なる父親のツテをもってしてでも、 KID逮捕に全身全霊をかけて挑むところだが、幸か不幸か、そのことを新一は知らない。 とにかく、このようにして、既に(黒羽にとっては)大切な予定で埋まっていた休日に、無理やり街中を 引きずり回されていた黒羽は、始終、不機嫌だった。 そして、十着目の試着に取り掛かっている母親を放っておいて、不貞腐れながらトイレに向かったのだが、 こういった一連の理由により、その扉の先にあったのがトイレではなく見知らぬ部屋で、見知らぬ人たちが 勢ぞろいしていた時も、その中に、新一の姿を見つけた黒羽は、心の底から信じていない神様に、 思わず感謝してしまったというわけだ。 そして、新一は、少し俯きがちに、お馴染みの体勢をとって、なにやら熱心に考えこんでいる。 おそらく自分がここにいるカラクリを推理しているのだろう。 しかし、同じように、黒羽も推理しようとは思わない。 だって、それは新一の役目だ。 黒羽の役目は盗むこと。 そう! 黒羽が此処にいる理由なんて、現に今こうして此処にいる、それだけで黒羽にとっては十分だ。 黒羽の役目は、こんなに近くに居る黒羽に気づかないくらい、彼が没頭しているこの部屋の謎から、新一の意識を盗んで、自分に向けさせることなのだ!! 「新一!新一!新一!新一!!新ちゃーん!!会いたかったー!」 |