ヒュンケルは思った。

そうか。愛し合えばいいのか。

十四人の中で、ヒュンケルは一番素直に、ルールを受け取った。
そもそも、根岸や城之内たちと違って、ヒュンケルの世界には魔法があるのだ。
見慣れた扉が、まったく別の空間に繋がっていたとしても、別に不思議ではない。
拙いのは、それが敵の手によるものだった場合だが、今回はそういうわけでもないらしい。
一人、ヒュンケルが今までお目にかかったこともないような禍々しい殺気を放っている長身の男がいるが、その殺気がこちらに向かっているわけではなさそうなので、心配はないだろう。
(城之内他、海馬を知っている人間ならば、真に恐ろしいのは巻き添えだ!と叫ぶところだ。)
とりあえず安全だということが分かれば、それでいい。
ヒュンケルは、すっかり肩の力を抜いた。
しかし、ヒュンケルのこの落ち着きようは、長年の苛酷な戦い故、生まれたものでもあったが、彼自身の生まれ持った人間性も、大きく関係していた。
つまり、彼の思考回路というものは、そう複雑には出来ていないのである。
だから、『今から皆さんには愛し合ってもらいます。』という突飛すぎる発言も、この部屋に集められた十四人が全員男だということも、ヒュンケルの頭の中では、すっかりスルーされてしまったのである。
だから、ヒュンケルは、素直に納得できたのである。
そして、特にすることのなくなったヒュンケルは、ただ黙って、なぜか全身で『愛し合ってもらいます。』宣言を拒絶しているポップを不思議そうに観察していた。

「………。」