「ねえ、なんで中西ってばいつも俺なんかと一緒にいてくれるんだと思う?そりゃルームメイトだからってのもあるだろうけど、教室でも一緒にいてくれるんだぜ?ああ!分かってるって!中西が優しいのは俺が一番知ってる!え?なんで三上は知らないんだよ。そりゃ渋沢と比べちゃ劣るかもしれないけど、天下の渋沢だぞ!仕方ないよ!た、確かに意地悪な時もあるけど、いつもじゃないぞ。だって、中西は俺が本当に困ってると、いつも現れて助けてくれるんだよ!え?なんで、困ってる時にいつも現れるのかって?しかも、どうして、本当に切羽詰った時にならないと現れないんだって?」



「あれ?なんでだろう?」



「それは、中西がっ…ぐむっ!」
言いかけた三上の口を、中西の英語ノートが塞いだ。
「おい、根岸、次、教室移動だろ。早く用意しろよ。」
「あ!そういや理科じゃん!ちょっと待って!」
そう言って根岸は自分の席に駆けていく。
授業の用意をするだけなのに、なぜあんなに、どったんばったんと音を立てる必要があるのか皆目検討がつかない。
「……口封じとは、やることが古いんじゃないの、中西さん?」
「いや、別に封じたわけじゃないんだけどね。」
「今更、実は中西君は変態です、って言われても、誰も驚かねーよ。」
「俺が驚くよ。」
「うーわー、自覚ないのかよ。やだねぇ、このストーカーが。」
「失礼な、保護者と呼んでくれ。」
露骨に顔を歪める三上とは対称に、中西は相変らずの無表情だ。
根岸はというと、手をすべらして筆箱の中身を周囲にぶちまけていた。
あたふたとペンを拾い集めている。
「保護者とは良く言ったもんだな。あいつが本当に立ち直れなくなる寸前になるまで、根岸の慌てふためく様を楽しんでるくせに。」
意地の悪い顔で三上が笑う。
「本当に必要な時にならないと手を出さない。まさに保護者じゃないか。」
「保護者は困ってる我が子を大喜びで鑑賞したりしねーよ。」
「世の中には色んな親がいるぞ、三上。」
あくまで保護者で通そうとする中西に、三上は疲れたように笑う。
「……お前の子どもに生まれた奴は不幸だな。」
「それは安心しろ。なにせ、根岸は子どもを生めな」
「それ以上、言うんじゃねぇえええ!!!!」
三上は元気をふりしぼって叫んだ。
春うららかな教室の中、健全な男子中学生が繰り広げる会話としてあまりに相応しくない。
しかし不運にも通りがかりにそれを聞いてしまったクラスメイトAは、一切を幻聴だと決め込んだ。ついでに、ここ数分の記憶を忘れることにした。それで正解だ。
三上もそれに便乗したかったが、いかんせん、会話を遮ったのが三上自身である分、それは叶わない願いだった。
これだから変態相手は嫌なのだ。
しかし同時に、なるほど、とも思う。
こんな変態を相手にしているのが、相手が変態だと分からない馬鹿だからこそ、万事上手くいくのである。
「あいたっ!」
そして、ペンを拾う根岸は、机の下に思い切り頭をぶつけて悲鳴を上げた。





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変態中西は私の原点です。